「俺は物覚えが悪いくせに、
 物忘れも悪いのかも
 しれないと思うことがある」


アオは顔をしかめてそう言った。

学生食堂の長くて安っぽいテーブルの上には、

湯気の立ち上がるうどんが置かれている。

正面に座るサクラの前にはカレーライス。

どちらも定番といえる代物だ。

サクラは眉を寄せ、首をかたけた。


「は?」


アオはむつかしい顔のまま、唇をとがらせる。


「やっぱりやめた。
 馬鹿にされそうだ」

「今更だろ」


即座に言われ、さらに唇をとがらせた。


「言ってもいいのか?」


カレーライスをすくいとったスプンをサクラは少し持ち上げてみせる。


「どうぞおかまいなく」