「きれいだね」


にっこりと笑って子供がそう言う。

多分、女の子だ。

俺も微笑み返した。


「ありがとう」


と、不意にその子の顔が恐いものに変わった。


「欲しいな、それ」


そろっという口調で言う。

眉をひそめ、その子を見た。


「欲しいな、それ」


同じ言葉を繰り返しながら、手を伸ばしてくる。

俺は瞬間的に後ろに下がっていた。

ざりっという感触が腕に走る。

ひっかかれていた。

すぐに血が滲んでくる。


「まいったな」


俺は苦笑した。

いまどきの子供は欲しいものを手に入れるためなら

暴力もいとわないわけだ。