「たーくーちゃん!」

…中学校の入学式。玲は制服姿で僕の家に迎えに来る。
彼女の制服姿を見たのは…小学校の卒業式以来だった。
「あれ? たくちゃん? いないの?」

玲が革靴を脱ぎ、2階へと繋がる階段の下から、顔を覗かせる。

「…バーカ。 居るに決まってんだろ?」

僕はまだ少し大きく感じるリュックを玲に軽く投げつけ、タンスの中から靴下を取り出した。
「いったぁ~…。なにすんのよ。たくちゃんのバカアホドジ間抜け!!」
玲は最後、僕に向かって“あっかんべー”をすると、勢いよく僕の家を出て行った。

僕は舌打ちをすると、階段に落ちていたリュックを拾い上げ、玄関まで行った。