「珈琲牛乳じゃなくて、珈琲にミルクたっぷりだよ」

 カウンターの向こうで、彼は笑う。

 津久美環状高架の下、昭和五十年から続いているという機関喫茶どらこにあ。テーブル席が三つにカウンター席しかない狭い店内で、私と彼の二人きり。

 甘い空気になればいいのにと期待するけども、彼はいつも全く取り合ってくれない。

「珈琲と牛乳の比率が一対二の飲み物は、どう考えたって珈琲牛乳だろーが」

 言いながらも、てきぱきと用意をしてくれる彼。優しいな、と思う。商売だからと言ってしまえばそれまでだけど。