「はやくぅ~」

「金持ってこなかったんだから当然でしょ!」

そんな声が飛び交う。

「早くしろよ」

動かない私に苛立った川瀬が髪をつかみ、

便器に顔を近づけた。

運の悪いことに、和式のトイレだった。

とっさに出した腕に力を入れて、

突っ込むことは阻止された。


目の前には流されなかったトイレットトペーパーがあった。

それに絡まったか何かして蛾が死んでいた。

水は茶色く淀んでおり、異臭を放っている。

伝えきれないぐらい臭かった。

便器も白ではなく、黄ばんだ色になっていた。

地面もピンク色だったのが、

黒に近い色になっていてこれもまた異臭がする。

思わず嗚咽が漏れた。


はっきり言ってこの学校のトイレは汚い。

掃除当番何やってんだよ。

強がってそんな事を呟いてみた。

精いっぱいの強がりだった。

心の奥底では“逃げたい”と泣いて叫んでる。

その心を捨て私はここに居るのだ。