男は『江藤ケイタ』と名乗った。

ケイタは私と同じように交通事故で父親を亡くしていた。


だから、好きになったんだ。


同じような悲しみを持った人間に。

何回も家を抜け出し、ケイタの元へと向かった。

ケイタはいつもあの路地にいて、煙草をくわえていた。

ケイタの吸う煙草は安物だったけど、私の大好きな匂いになった。


数え切れないほどキスしたし、何度も体を重ねて愛し合った。

その度に煙草の匂いが私を包んだ。