川瀬がトイレを出て行った後、

ケイタと呼ばれた男は煙草を取り出し火をつけた。

トイレが煙で霧のように真っ白に覆われた。

私は頬の感覚がなく、

体全体がしびれて動けないので床に這いつくばっていた。

煙の匂いが鼻を刺す。


「宜しくね。優衣ちゃん。」

宜しくしたいのなら、初対面で殴るかっつーの。


ケイタは、どこか川瀬に似ているところがあった。

雰囲気だろうか。


私は、脳で考えるより先に言葉が出た。

「アンタ、川瀬に似てる。」

ケイタは私を睨んだ。

「黙れよ、芋虫の分際で。」

たったそれだけの言葉にひどくビクついた。

ケイタはタバコを足で擦り付けて火を消した。