私は壁に飾られたそれをそっと外し、手のひらに収めてひとしきり眺めた。



…綺麗。



レースの感触はまるで羽根のように軽かったのだけれど、
このネクタイは確かにいま、自分の手の中にあるんだと考えたら
実量よりも重たく感じられた。



このネクタイがあの人の胸元を飾る。



…まだ顔は知らないけれど、きっとあの人は聡明で綺麗な顔立ちをした人だから似合うはずだ。

ううん、似合わないはずがない。