『信長も死んだことだし、お家再興が成るか成らぬかはやってみなければ分からない。やってみてだめなら諦めもつく。戦いに果てれば、そこが己の死に場所となる』
 ついに具親は二度目の挙兵を決意した。
『御家再興の戦いに果てれば、そこが己の死に場所となる』
その思いは、多くの同士を一時に失った安保直親の一途な思いでもあった。
「故郷の地に骨を埋める覚悟で帰郷いたしとうございます。今日を限りとしてお暇頂戴仕る」
 八月に入って涼しくなると、具親は津之郷蔀山居館に行き、将軍義昭や義治らに別れを継げた。出発に際して、具親は正室波野姫を同行させることにした。
二度と、鞆津に帰ることはない。御家再興がなるかどうかわからぬが、成らぬときは妻とともに戦いに死のうと覚悟する。
しかし、当年六歳の嫡子鞆麿は妻の妹久野姫や亀千代、明応丸などと一緒にその地に残すことにして、くれぐれも道途に飢え凍えることのなきよう、その世話を義兄義治に依頼する。