でも今、東の空を見上げてその時を待っているのだ。覚えたての煙草を咥え、午後八時から打ちあがる花火を。
 
仲間たちはどこかで待ち合わせて、女子は浴衣で大濠公園まで出掛けるのだと約束していた。

夏休みを目前に控えた学校で、俺がそれに誘われることは無かった。

千夏は今頃、大喜びしてあの公園辺りを誰かと歩いているのだろう。
そう思うとまた切なくもなるが、幼馴染の勝気な彼女と違って俺はいつまでも煮え切らない。

温んだ風がそよぐたび、不快な気分が纏わり付くのをじっと堪えてぼんやりとしてしまう、その半分を千夏のせいにしてたそがれている。
 
そんな時、不意に鳴り出した携帯電話が本当は嬉しかった。

「よっちゃん、なにしてんの?」

「別に……」

「ふうん。で、花火見に行かないの?」

「オレ、誘われてないから」

「ふうん。オレ、誘われてないから。か……」

「面倒くせえなあ、なに?」

「よっちゃん、また屋根でいじけてんの?」

別に――また、そんな返事をしてしまう自分が少し腹立たしくなってくる。