「目が!目がぁ~!」

突然神谷君が苦しみはじめた。

「どうしたの!目!?」

これは、私と同じ発作・・・。
そうだ目薬!

ポケットから目薬を取り出そうとして血の気がひいた。

それは、少し前まで私たちを追っていた、

やわらかい物の一部分であった。
しかし、あの時のように、動き出すこともなく、
静かに京子の手の中に収まっている。

「硬くなってる・・」

神谷君に目薬を渡すと、
やわらかい物の一部が硬くなったものを観察した。

「神谷君、これどういう事?」

「それはモイスチャー効果だ」

モイスチャー効果!?モイスチャー効果って・・・。

硬くなったやわらかいモノをまじまじと見つめながら、

神谷少年は語りつづけた。

「見ろ、こんなに硬くなった、これから先は僕でもわからないぞ、
一体どうなるかなんて、俺が知ることか・・・ブツブツ」

神谷少年の背中が濡れていた。

そういえば・・・!京子は大変なことを思い出した。
昨日の事が夢じゃないならあの置き手紙は・・・!

しまった!昨日の夜は気絶して・・・。

「サンプラザ中野に会いに行かなくちゃ!」

ここに来た光の輪は消えている。

「そうだった・・・ここはロス(アンジェルス)・・・」

ちゃんと帰れるのだろうか?

「光の輪はどこにいったの??」

と神谷を見た瞬間・・・。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ

不穏な空気。

「僕も、詳しい事はわからないんだ、現れろって強く願うと現れるんだ。」

そして口からレシートのように、言葉が文字になって浮かびあがってきた。

“サティスファクション”

文字が現れた。
どうしてこんなことができるの?私にもできるの?

「君にもできるよ」神谷君はニヤリとした。


「サティ・・・サティ・・・サティスファク・・・」

心に思いながら出ろ、、出ろ、、、出ろ、、、。

「ハハ、そう簡単にはできやしないさ」

心穏やかではない二人が、二人だけのゆったりとした、

ほんの少しの時間ではあるが心を休めたのだった。


ロスの空は蒼く澄んでいた。