『ねえ。健太郎さんは何で私だったの?』
珈琲を淹れながら加奈子がキッチンで対面になってあるカウンターに居る健太郎を見た。
『ん?何でって…好みだったから。』
『それだけ?』
『歯医者で会った時は、まさか自分より年下とは思ってもみなかったな。』
笑いながら健太郎が答えた。
『一つしか変わらないけどね。』
『後は上品さ!26歳にしては落ち着いてたし、仕草に見惚れた。』
加奈子が耳を赤くして俯き、マグカップを健太郎に差し出した。
『照れてんのか?』
また笑う健太郎を悔しそうに見る加奈子に横に座る様に促した。
『多分、タイミングが合ったんだよな。』
『タイミング?』
『質問ばっかだな。ま、いいか。そう、タイミング。俺はめったに女に惚れない。大抵は女から言われて付き合う。けど、すぐ振られる。何でかわかるか?』
『付き合ってみて、期待とは違ったから?』
『うん、そう。女は理想ばかりをぶつけてくる。』
『確かにそうかもね。』
『俺は基本、自由でいたい。好きな時に買い物に行って、好きな時に飲みに行く。』
『健太郎さんB型だもんね。』
加奈子が意地悪そうな顔をした。
『まぁ、そういう事だっ!結局、女は去って行ったな。』
健太郎がマグカップを持ち、ソファーへ移動した。