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加奈子は25歳、歯科医師。
雇われだか、それなりの給料を貰い、山梨県の実家を離れて東京の町田市に住んでいた。
3LDKの広すぎるマンションを購入してくれたのは父であった。

父もまた歯科医師であり、実家で開業医をしている。実家を継ぐのは兄なので、加奈子は悠々と実家を離れて都内で生活を始めた。

そんな加奈子に心配性な父はセキュリティ万全の良いマンションを用意してくれたのだ。いずれ、結婚したらそのまま住めば良いと加奈子自身も父に甘えて生活を始めたのだ。


母は専業主婦なので1ヵ月に1回は食料を送ってくる。
加奈子の健康を気にしている様で、しょっちゅう連絡をよこす。

加奈子が良い家庭環境で生活してきたのは明白である。
片付いたリビングとキッチン。自室もシンプルで空いている部屋も綺麗になっている。
加奈子は自分の生活には満足していた。
が、─────何かが物足りない。
─私はまだ25歳。
友達は実家で生活をしていたりでめったに会えない。
私はこの1年とちょっと、仕事と1人暮らしに慣れるので精一杯だった。
最近、友達の結婚式の数も増えてきた。
その度に実家に戻ったり、東京と山梨の間を行き来する機会が多かった。
───が、次々と結婚して行く友人と何も変わらない自分。
少しうらやましいと思ってしまう自分もいる。