『たまきは坂本さんと進展ないの?あの人も横溝さんみたいに積極的に見えるけど。』
『全然っ!メール苦手みたいで3通送って1通返ってくれば良い方!会えるのも月1だし…毎週会える加奈子が羨ましいよ。』
珍しく落ち込んだ口調なたまきが膝に顎を置き、唇を尖らした。
彼女の癖は唇を尖らせる事であり、拗ねている証拠である。
『私達は私のペース。相手は相手のペースなんだから、焦る事ないって。』
加奈子は塗り終わった足の爪を見つめながら言った。
『そいだけどさぁ…坂本さんは、あたしの事どう思ってるか気になるし…』
『だーからっ!焦らない!まだまだ見極めなきゃ。もったいないじゃない。』
立ち上がり、キッチンへ向かった加奈子は冷蔵庫から缶ビールを二本取り出した。
『焦るっしょ〜!もう26だし、周りはどんどん結婚してくし。』
『私達は手に職持ってるし、嫁き遅れでも何とかなるわよ。』
苦笑しながら缶ビールをたまきに手渡し、ソファーに腰をおろした加奈子はプルトップに指を掛けた。
『寛大になりなさい。焦る女には魅力はないわ。』
プシュッ
と、音を出して泡が出た缶ビールを挙げて加奈子は微笑んだ。
『はい!乾杯!!』
たまきは足を戻し、加奈子に賛同した。