矢野猛は日記帳を閉じた。

彼の日記帳のあらゆるページに真知子への思いは散らされていた。

「真知子がいなくなったのも、こんな夏の頃だったな」


思えば思うほど、
時が経てば経つほど。
切なさは増していった。

こんな夏の夜は、一人がとても身に染みる。

どうしても、真知子以外に目を向けることができなかったのだ。

だってそれは、真知子ではないのだから。