「もしもし」


『仁?ちょうど電話しようと思っていたの』




こんなときに限って、由美子は彼女らしく嬉しそうな声を出した。



「どうしたんだ?」



『今日、急に仕事がなくなって時間ができたから。夜、会いに行こうかと思って』




罪悪感が俺を押しつぶそうとする。



いい彼女じゃないか。


それなのに、どうして他の女性に恋など……



「そうか。最近、仕事忙しいのか?」


『うん。4月までは結構忙しいかな。ごめんね。いつも……』



俺は待った。


―仁はどう?―


という言葉を。



俺だって忙しい。


自分の病院を持つってことは想像以上に大変で、

いろんな管理をしなくちゃいけない。



気配りも必要だし、気も使う。


毎日毎日、疲れてる。



心配してくれないのか?