雅也さんは、イケメンドクターのことを知らない。
なんだかかわいそうに思えてくる。
確かに雅也さんは、香織先輩という彼女がいるのに、コンパに行っていたし、浮気疑惑も何度かあったようだけど……
「雅也さんは、やり直したんですね」
『いなくなって気付くなんて、ほんとにバカだろ、俺って……』
雅也さんは、今からここへ来ると言い出した。
私は、願ってもないチャンスだって喜べばいいのに、複雑な想いだった。
「まだ鍵持ってるから、俺が香織を部屋まで連れていくよ」
ジャージ姿で現れた雅也さんは、いつもと違った印象だった。
お酒を飲んでいないせいか、真面目っぽい雰囲気で、やっぱり私はドキドキしてしまう。
車の中でも、雅也さんは無口だった。
いつもはもっと軽い感じなのに……
失恋のショックなのかな。