俺は香織を抱いた。
何度も名前を呼び、暗闇の中で見つめ合う。
目をしっかりと開けて、香織を見た。
目を閉じるのがもったいないくらい、香織は美しい。
やっと見つけた俺の愛する女性。
愛ってどういうものなのか、教えてくれたのは香織だった。
嫉妬とか束縛とか、不安や安心……
いろんな感情を俺は香織から教わった。
本当に人を愛して、多くのことを知った。
「仁ノ介……Sじゃん」
「香織こそ、Sだろ?」
「仁ノ介のエッチ」
「香織の方がエッチだろ」
俺は、香織と同じ時間を過ごすことに、心から幸せを感じる。
香織と一緒にいる時の『俺』が、俺は好きだった。
誠実で優しい医者という顔、
それも俺自身だけど……
本当の俺、
飾らない俺でいられる場所は
ここしかない。