隣で頭を下げる由美子がかわいそうになって、私はもう帰ろうと思った。




その時、仁ノ介君がこの状況を見てしまった。



ひどく怒っている。


当たり前だ。



私という人間を軽蔑したんだろう。




部屋の中で数分話した。


仁ノ介君は、どうして由美子を愛すことができなかったのか、話してくれた。




私は納得した。

そうだな。



君がこの彼女を選んだ理由がわかった気がするよ。



由美子は、私の娘だから、誰よりもかわいいが、仁ノ介君にとって、最愛の人にはなれなかった。





1番私が胸を打たれたのは、バレンタインの話だった。



由美子は、今年のバレンタイン、仁ノ介君にチョコをあげなかったと言うのだ。




男って不思議なものでね。

そんなささいなことが大事だったりするんだよ。



チョコなんていらないよ、と言いながら、すごく楽しみにしていたりする生き物なんだ。




婚約しているからバレンタインなんていらないだろうという考えは、間違っている。


由美子は、まだ若い。


これからもっと素敵な女性になれる。