翌日、仁ノ介君が選んだ女性に会いに行った。
由美子も、私の考えに賛成した。
うまくいくわけがないってわかっていたんだ。
どうして止められなかったのだろう。
由美子も私も、無駄なことなんだとわかっていた。
でも、私は何かしたかった。
私のせいで苦しめてしまった娘の為に、私が何かできないかと。
こんなことしかできない私を許しておくれ。
「あの……お願いがありまして。どうかこれをお受け取りください」
風の強いマンションの踊り場で、私は仁ノ介君の彼女に小切手を手渡した。
もちろん受け取るわけがない。
仁ノ介君が選んだほどの女性だ。
金で動くはずはないんだ。