あれから何年後だったか。
妻が病気になった。
命に関わる病気ではないらしいが、妻は不安ばかりを口にするようになった。
由美子の結婚も見届けられないかも知れない、と泣き出したり
孫の顔も見ないまま死んでしまう、とか弱気なことばかり言うようになった。
私は由美子の言葉を思い出した。
仁ノ介君を会わせてみようか。
仁ノ介君は、特定の彼女はいないという噂だった。
今は、ずいぶん落ち着いていて、良い医者になっている。
有望な外科医で、有名大学病院からも声がかかるほどだ。
彼なら、由美子も結婚を考えるんじゃないか。