仁は、この修羅場のど真ん中にいながら、とても嬉しそうな顔をして、香織という女性を見つめていた。
「あなたが、仁と私の結婚をめちゃくちゃにしたのね」
こんなセリフを言うつもりはなかった。
仁のせいだから。
仁が、香織さんのこととても愛しそうに見つめていたから。
仁のせいなんだから!!
「ごめんなさい」
香織さんは、深々と頭を下げ、謝った。
でもそのごめんなさいが、とても悔しく感じた。
「あなた、瀬名先生目当てで病院に通ってたんですか?」
関係のない受付嬢が1番怒りをあわらにしていた。
仁のことを一方的に好きだっただけなのに、この場にいるのはおかしい。
そう思いながらも、私は受付嬢と手を組み、仁と香織さんを壁際まで追い詰めようと思った。
しょんぼりする仁。
泣き出しそうな香織さん。
私と受付嬢は、ひどい言葉を浴びせた。