話があると言った俺の顔を見て、香織は悲しい表情になった。
俺の話が、良くない話だと思ったの?
「逃げるなって」
香織の背中から、俺は香織の手を握った。
鍵を開けようとする香織を止めた。
「部屋には入らない。車で話したい」
部屋に入りたくないわけじゃない。
もちろん入りたい。
香織がどんなマグカップでコーヒーを飲むのか知りたいし、
香織のベッドやソファや……
見てみたいものはたくさんある。
でも、俺と香織にはまだ未来があるから。
今は我慢する。
欲望に負けて、君を抱いてしまいそうだから……
久しぶりに再会した君は、もっと素敵になっていたから。
俺は自分を抑える自信がないんだ。