俺の心の中で、すっかり動き出してしまった香織との未来。 俺の独りよがりだったのだろうか。 俺は、診察室から出て行く香織の後輩の背中に向かって言った。 「明日……来て欲しいと伝えてくれ」 振り向きもせずに、その女性はドアを閉めた。 俺は、ホワイトデーに渡す為に、香織に時計を買っていた。 診察室の俺の机の1番下。 小さな箱を手に乗せて、どうか明日会えますようにと祈った。