何を言っても、もう仁の心は取り戻せないことはわかっていた。
一度決めたら突き進む人。
よりを戻せる可能性が少ないとわかっていても、このままあっさりとうなづくわけにはいかない。
これは女のプライド……
仁じゃないとだめだからじゃない。
きっとそう。
私は、心から仁を愛して結婚したかったわけじゃない。
そう自分に言い聞かせて、溢れる涙を拭った。
何を泣いているの?
今さら。
そんなに大事なら、もっとできることがあったはず。
外科医である仁は、ストレスだってたまっていただろうし、愚痴も言いたかっただろう。
でも、私は仁のオアシスにはなれなかった。
なろうともしなかった。
「ごめん。謝って許してもらえることじゃないと思う。でも、好きな人ができる前から、君との結婚を迷っていた」
仁の愛した女性は、どんな人?
私は自分に自信があった。
スタイルも、顔も……才能も。
でも、私が男だったら絶対に私のような女を選ばない。
男性にとって、私のような女は「結婚相手」としてふさわしくない。