父上様と母上様には、私は存在しないのでしょうか…



ただの一度も私の話が出ることは無く、二人の声は遠くなった






「姫様、ただいま戻りました」



「おかえりなさい、村はどうだった?」



「やはり、あのお方は隣村の方らしいです。将軍様縁のお侍様のお屋敷があるらしいので…」



「まあ、そう…」



ひのとが必死に訪ね歩いてくれたことにも喜びを感じた



「大きなお屋敷の方なら、姫様と御婚姻できるのではないですか?」



「父上様と母上様がきっとお許しにならないわ…」



「そんな…、確かに姫様はご病気ですけど、毎日お薬を出しているのは旦那様ですし、あんな遠くから名家のご子息がお通いくださるなら…
姫様も立派な名家のお姫様なのですよ?」



「ええ、そうね…」



笑って見せたけど、先程の父上様の会話が離れなかった…