お互いに部屋に入っても、
俺は何もできない自分に、
歯がゆかった。

部屋に母親が入ってきた。

「香澄ちゃんの心を癒すのは、
太郎あなただけだよ。

香澄ちゃんは、
本気で太郎が好きだから麗子さんに
会ったと思う。

麗子さんに取られたくない
一心だったと思う。」

「分かっている。

俺の身も心も
香澄しかない!!」

「だったら香澄ちゃんのところに
言ってあげなさい。

香澄ちゃんも
あなたも本気で泣けないわよ。
本物の涙が出ないわよ」と
母親の言葉がやけに響いた。

本気で泣けない・・・・。

俺も香澄も・・・。
俺は香澄の部屋に行った。