父さんと母さんは本当に愛し合っている。
色違いのパジャマを着て、色違いの歯ブラシを使って、ひとつのベッドで同じ夢を見ているのだろう。

母さんに昔聞いたことがある。
『光輝は私の最初で最後の人なの』と。

こう誇らしげに言っていた母さんの顔が幸せに溢れていて、今でも脳裏から離れないでいた。

きっと父さんも同じことを言うんじゃないかな?

ずっと、ずっと、
父さんと母さんは幸せで溢れているんだ─…


ぼーっと立ち尽くしていたら、父さんに後ろから新聞紙で叩かれた。


『いったいな…』


『ふられたくらいで沈んだりすんなよ。前を見ろ、前を』


こう言って、父さんは母さんから熱々のコーヒーが入ったマグカップを受け取っていた。

叩かれたところがじーんとまだ痛さが残っている。

手で頭をさすりながら、俺は視線を下にずらした。


『なんだよ?雅、美加ちゃんにふられたんだ?』