父さんの笑った顔を見るのが俺は小さい頃から好きだった。
前より少し皺が増えた顔をくしゃっとして、優しく微笑む。


俺は父さんの横を通り、履いていた健康サンダルを脱ぎ捨てた。
そして、ダメージを食らった体を動かす。
父さんは俺の変化にすぐ気がつくんだ。


『美加ちゃんか?さっき来てたの』


新聞を広げながら俺の後ろを歩く父さん。
今の俺に《美加》という言葉を聞かせないで。
また、涙が出てしまうから。


俺は小さく頷いて、リビングに向かった。
そこには朝食の準備をしている母さんと、テレビに集中している弟の美月《みづき》がいた。


『おはよ、雅』


リビングに行った途端、母さんの眩しい笑顔が俺の視界を占領した。
母さんの笑顔は、毎日見ても眩しいと思う。

そしてなにより、綺麗だと思う。
マザコンとか言われるかもしれないけど、息子から見ても綺麗だと思うんだ。