どっちが早くその場所に着くかって…よく競争したことあるよね?
でも大人になるにつれ、そんな些細な競争でさえ『めんどくさい』という言葉で片付けて、しなくなっている。

今日、ヒカルと久しぶりに競争をしたかもしれない。
ゴールはバス停。
『競争な!』なんて、スタートの言葉などなかった。
俺達は知らない間に走っていて、先にバス停に着いた俺は後から来るヒカルに向かってピースサインを見せていた。


『うぜぇよ、お前』


乱れた息を整えて、
ヒカルは金髪の髪の毛を掻き上げる。
美月と同じように、
ヒカルとの仲も深まっただろう。

でも俺は新たに知ることとなる。
ヒカルと俺に結ばれた、固い絆があるということを。




朝から走ったせいか、
バスの揺れが妙に気持ちが良くて、寝てしまいそうになった。
だがヒカルが『着いたぞ』と言って、肘で俺の体をつついたせいで目が覚めてしまう。