聞かなくても分かる話を聞いてしまったのだ。
もう、遅い…

俺は速くなる心臓の音を美羽に聞かれないように、必死に誤魔化す。

例えば、靴で地面を蹴るとか。
無意味に携帯を開いたりするとか。


『…探しもの。でも見つからないの』


『それって大事なもの?』


美羽は一人で探しものをしていたらしい。
そんな大事なものなのだろうか?


『いいの。もう…見つからないなら、それでいいの』



美羽はひょいっとベンチから飛んで、俺に背を向ける。
その華奢な背中から羽が生えたように見えた…
これは錯覚?

やっぱりキミは天使なのかな─…?



前の俺なら美羽に『一緒に探してやるよ!』なんてお節介のひとつも口に出しているのだろうが、今の俺には出来ない。

そんなお節介で出来た優しさで美羽は救えないと気付いたから…



『そっか。見付かるといいね…』