またキミは俺をそんな顔をして嘲笑うんだね─…どこか寂しい瞳を浮かべて、だけど愛しそうに。
その愛しい瞳を向けるのは、ここで生きている俺ではなくて、キミの心の中で生きている─…
現実の世界にはいない…陸なんだろ─…?


どす黒い月は、俺たちを照らしてはくれないみたいだ。
揺れる桜の木さえ、
静寂なこの公園でさえ、俺の存在を否定するかのよう。
陸を─…望んでいるの?

視界に写るキミも陸を望むんだろ?


俺は起き上がり、髪の毛についた葉っぱを手で祓う。


『…考え事してただけ』

『あんたでも考え事するんだ?ここで』


美羽はこう言って、人差し指で頭をさした。
美羽の挑発さえ、今は通じない。
それに…今日のことが引っかかるからだ。
俺のこと嫌いだから、早退したんじゃないのか?

なのに今はご機嫌を取り戻したのか、いつもと同じように話している。


…あぁ、そっか。


ここは陸との思い出の場所だからか─…