「……った…助けて下さい…」


満員電車の中


俺の制服をギュッと握り
潤んだ瞳で助けを求められた

「へ?」


「助けて……」


何を?

そう聞こうとして俺は気付いた


助けを求める彼女の後ろには中年のサラリーマン風の男


満員電車で密着しているとはいえ

明らかに不自然な態勢


こいつ…痴漢か…


シャツを掴む彼女の手が震えているのがわかる。


俺は彼女を自分に寄り掛からせて、腰から手を伸ばし彼女の体に触れる腕を掴んだ


「なっ…なんだ」


「朝から痴漢なんてしてんじゃねーよ」


声を憚らず喋ったせいか、回りがざわついた


「ち、痴漢なんかしてない!」


「嘘はよくない」


「証拠でもあるってのか!」


「彼女の体に触れてた腕だ」


掴んだ腕をそのまま真上に上げた


「…っ…」


「次で降りてな」