「大…丈夫かっ!?」
彼女を浜辺に横たわらせながら息も切れ切れに聞く。
「あ…んた、何でこんなこと…。そりゃ嫌なこと誰だってあるけど命落としたらそれで終わりだろ?あんな綺麗な歌も歌えるのに…」
「…あの…さ」
それまで黙ったまま聞いていた彼女の唇が動く。
その声は歌声とはまた違い心地よく親しみやすい声色をしていた。
「勘違いしてない?」
「勘違い?」
彼女は身体をゆっくり起こしながら俺を見つめた。
「そう。勘違い。してるでしょ。私が死のうとしてるって」
真っすぐ俺を見つめながら彼女は話しを続けた。
「私は別に死ぬために海に入ったわけじゃないし。…まぁ確かに嫌なことはあったけど…」
気分転換に海に入っていたと彼女は言った。よく嫌なことがあると海に来るのだという。
こっちとしてはいい迷惑だ。あんなとこから飛び降りれば誰だって勘違いするだろう。
「何かさ、この広い海に浸かってると自分がちっぽけな感じがするんだよね。今悩んでることもどうでもよくなってさ」
元気をもらえるんだよねっ。と海を見つめながら話す声とは裏腹に彼女の顔が少し曇る。