「それと父親のアメリカ行きが決まってね。その時に私に相談されて私が引き取ったのよ。……また飛夜を傷つけるんじゃないかとおそれていたの」

 そんな……やらなきゃいいだけじゃないの?
 何で……お兄ちゃんがかわいそうだよ!

「蓮音、分かってあげて……」
 私の不服そうな顔を見てお母さんが言った。
 分からない。
 子どもを……自分から手放すなんて……!

 でも……それは私が恵まれた、何も問題の無い普通の家族に生まれたからかもしれない。
 ちょっと違うトコもあるけどさ。

「飛夜が家に来てよかったと思わない?」
 そうだよね……色々イヤな事も有るけど、お兄ちゃんが居なかったら……私は私じゃないかも。

「そうだよね、家に来なかったら私とお兄ちゃんは会わなかったかもしれないんだし……」

 お兄ちゃんみたいに何でも出来る人に凡人の私が知り合いになるわけないもん。
 勉強教えてもらえるし、良かったんだ。

 ちょっとした自慢になるしね。