「飛夜くん……別に蓮音ちゃんの部屋に行くくらいいいだろ」

 蓮音が居るって言わなければよかった。
 蓮音はいつ陸に顔見せるつもりなんだ?

「ケチ〜」
「早く行くぞ」

 陸を引っ張ろうとするが、陸は嫌がって動こうとしない。
 この際、蓮音を呼ぼうかと思ったが……止めておく。


「何しに来たんだ?」
「アレ探し」


 ニヤリと笑うと、俺の部屋に素早く入っていく。
 探しても何にも出ないっていうのに……。

 呆れてため息をついていると、蓮音の部屋のドアが開いて蓮音が顔だけ出した。
 俺だけなのを確認すると、廊下へ出る。

「陸先輩はお兄ちゃんの部屋?」
「ああ、陸に会わなくていいのか?」

 服を着替えたってことは、陸に挨拶でもしようとしたんだろう。
 別にする必要もないけどな。

「う、うん。あ、お茶持ってこようか?」
「いや、……ああ、頼む」

 ここで断れば相当うろたえたな。折角挨拶をするきっかけを見つけたのに駄目になって。
 蓮音は笑顔で階段を下りていく。

 さっき、一瞬断ろうと思ったのは……蓮音をカラカいたいからか……陸に会わせたくないからか……。
 俺はどちらかに気付くわけにはいかない。

 前者でなければいけないんだ。