パンを口に詰め込むと、お兄ちゃんの空になったコーヒーカップと皿を洗ってから、部屋に戻った。

 今日は一日のんびり過ごそうと思ったのに……。
 クローゼットからテキトーに服を選んで着替えて、ボサボサの髪の毛をセット。
 こんな姿誰にも見せられないや。

 お兄ちゃんは家族だから見せられるけど。
 兄妹で恥ずかしがってたら生活していけないよ。少しは恥じらいを持てって言われるけどね。

 でもね……恥ずかしがったらいけない。そう私の体が……心が警告してる。
 だって、恥ずかしがるってことは……。

 そうこう考えてたら、玄関の呼び鈴の音とちょっと後に階段を上がってくる音。
 出るタイミング逃した。

 玄関であいさつしようと思ったのに……。
 とりあえず、お兄ちゃんたちがお兄ちゃんの部屋に入ったら部屋を出よう。
 そう思って耳をそばだててると、お兄ちゃんの少し怒鳴る声と、陸先輩の声。

 何言ってるかは聞き取れないけど……何か言い争ってるみたい。

 早く行ってくれたらいいのに……出られないし、私の気持ちが落ち着かないから。