蓮音は自室の鏡の前で目を輝かせていた。
「カワイ〜♪制服が」
 自分で言って沈んでしまう。どうせ可愛くないもん。
 中学の時はブレザーで正直、セーラー服に憧れていた。残念なのは、夏はセーラー服じゃなくてシャツにネクタイなこと。

「蓮音ー?」
「今行くー!」

 机に置いてあったおニューの鞄を手に取ると、何かこそばゆい。
 改めて高校生になるんだなぁって実感。

 階段を下りてダイニングに入ると、お父さんとお母さんしかいない。
「おはよう、蓮音」
「おはよ!お父さん。」
 蓮音はイスに座ると、パンを手に取った。
「お母さん、お兄ちゃんは?」

 メイクをばっちりにしてダイニングに入ってきた母。30後半には見えないくらい若い感じ。
「先行ったわよ。忙しいんですって」
 ふぅーん。何が忙しいんだろ?何か役員やってるのかな?
「大分急いでるみたいだったなぁ」
 新聞を閉じながら父が言う。
「そうね。飛夜が制服のボタンを全開にして家を出ることは滅多に無いわね」
「えっ、あのまま出てったの!?」

 家周辺では真面目な好青年としておばさんはもちろん小さい子にもモテモテなお兄ちゃんが……。