「部活に来れなくても、斉藤は家で指遣いの練習だけでもすればいいから」
「うん…わかった、先生!」
あたしのいつもの笑顔を見て、先生はホッとした表情を見せた。
「千鶴!ほら、早くしないと涼雅君待ちくたびれてるよ!」
「え?…あっ!そうだった!!」
トランペット吹くと、集中しすぎてスッカリ忘れちゃう。
「じゃあ、私は先に帰るね。千鶴は涼雅君とラブラブな帰り道を過ごしてね〜」
ニヤニヤしながら百合はあたしに手を振った。
「ラッ、ラブラブなんかじゃないから!!涼雅が勝手に…っ!!」
あたしの言葉を聞かずに、百合は手を振って階段を駆け降りて行った。
あー…もー……
百合が『ラブラブ』とか、変なこと言うから!!
なんか緊張するじゃん!!!
あたしはドキドキしてるのを隠すように、ゆっくりと呼吸しながら教室に向かった。
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