「千鶴ーっ、今日練習してく?」
帰りのホームルームが終わり、先生が教室を出た途端、百合があたしのそばへ駆け寄ってきた。
手では、トランペットを操る動作をする。
「うん、今日はやっていこっかな。最近サボりっぱなしだし」
「お母さんの方は…今日は平気なの?」
「うん…昨日行ったし、今日は父さんもいるから」
あたしはカバンに今日の復習と明日の予習のためのノートや教科書を入れ、立ち上がろうとした。
…そのとき。
グイッ
…立ち上がれない。
カバンが持ち上がらない。
「おまえんち、母ちゃんどうしたの?」
涼雅が後ろを振り返り、カバンを肘で押さえながらあたしの目を見ていた。
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