帰りのホームルームが終わり、友達にお別れをして、教室を出た時でした。

「やっ」

と、背後から声をかけられ、振り返って見ると、

「……アナタ……」

あの、森山という男の子が、壁に寄りかかっていました。

ちょうど、私が進むほうと逆にいたので、教室を出た時でもまったく気付きませんでした。

教室で少し友達とお喋りをしていたのに……彼は、もしかして、ずっと待っていたんでしょうか。

「待ってたよ」

やっぱり、と思わせることを口にして、彼は歩み寄ってきます。

その手が、

「さあ、行こう?」

「どこへ?」

「いいから。君に、逢ってほしい人がいる」

「どうして?」

「ほっとけないからさ」

まるで舞踏会に誘うように下から私の手をすくいあげ、引っ張りました。

一瞬、手の甲にキスをされるかと思ったくらいでした。

「さあ!」

とそして、

「行こう!」

「っ、ちょっと、待っ」

て、と私が言い切るよりも早く、彼は駆け出しました。