窓際の席、その笑顔で、クラスのみんなと話をしていた時でした。

「ねぇ君、今、病んでいるでしょう?」

廊下側の窓から上半身だけを覗かせて、とても『できた』風な笑みを口許に浮かべた彼が、現れたのは。

前屈みになり、窓のサッシに肘を突いた彼は、さらさらの栗毛と、柔らかな灰色っぽい眼差しで、言いました。

「だから、仮面をつける」

「は?」「なに?」「つかだれ?」

「だからどんどん、疑ってしまうんだ」

混乱しているクラスメイト達を無視して、彼はただ、私だけを見てきます。

その手が伸ばされて、

「そうじゃ……ないよ」

「え?」

「笑顔の使い方は、そうじゃ、ないんだよ?」

私の頬に、触れました。

綺麗な顔立ちで、男の子とは感じない細さの彼は、とても優しく私の頬を撫でます。目元から、顎先にかけて、ゆっくり。

そして一度、「ふふ」と笑いました。