「高村の傷の原因……小百合、お前、なんだろ?」

「……」

「いろいろ調べてわかってる。高村は気付いてないみたいだが、お前が……」

「だから、なんです?」

「だから! ……だから……もう、気に、するなよ」

「……」

「もう気に病むな。お前は、お前が思うほど悪くなんか」

ない、とまで言葉は続かなかった。

小百合が、壮馬を見つめていた。

穴が空きそうなほど。

悲しそうに、苦しそうに――

なにより、自分を笑ってくれと、蔑んでくれという目で。

「壮馬くん、バカ、言わないでください」

そうっと、壮馬の手がはがされる、

「私は、アナタが言うほど、よくはないです。だって、人をひとり、殺したんですから」

「っ、それは……!」

「いきましょ。もう五時間目、始まりますからね」

そして、静かに歩き出す。

壮馬はただ、

「――っ、ふざけんな。……お前の傷は、俺が縫合してやる。絶対に。――絶対にだ!!」

テディベアのように応えないその背中へ、叫ぶことしかできなかった。