「今日はもうおとなしく男子の格好やめて、ちゃんと女子の制服着よっかな」

「……」

「いやほら、まひるちゃんのことが解決したんだ。せめて帰りぐらい朗らかな気分のままがいいじゃない。また先生に追い回されちゃ台無しでしょ? ――じゃあ壮馬」

そして入り口で、振り返る。

とても『できた』風な笑みが、

「ありがとう」

の言葉を告げて、去っていった。

――部室のドアを、開けたままで。

「……まったく」

様々な思いから溜め息をついた壮馬は、ドアのところまで歩いていって、気付いた。

出てすぐ脇のところに、牧田小百合がいるのに。

穏やかな小百合の目が、ちらりと壮馬を見上げる。

「まひるちゃん、ぎこちない笑みがなおりましたね。さっき見てきたら、とても自然に笑ってましたよ」

「そりゃあそうだ。俺は裁縫部だからな」

「ふ、ふ。ですよね」

それだけの会話で、小百合はくるりと背を向ける。

が、

「待てよ」

壮馬は、彼女が去ろうとするのを許さなかった。

腕を掴み、小百合の動きを止める。

責めているように聞こえないよう、問うた。