「コレ。」

「・・・私の上履き。」



差し出した上履き。

彼女が肯定したから、そっと俺は彼女向きにそれを置いた。

ゆっくりと彼女がそれを履く。

もちろんぴったりだった。



「どうして、先輩が?」

「いや、ゴミ捨てしてたら見つけてさ。」



ハハハと笑うが、彼女はジトッと俺を睨む。



「いじめられてる人間なら、ゴミ捨てぐらい行かされると思いません?」

「え?あ・・・」

「ゴミ捨て行ったとき、なくて逆にびっくりしたんですから。」



あー、やっぱり俺バカだ。

何やってんだろ。逆に迷惑じゃんか。

困って頭を掻く。



「・・・なんて。見つかったからいいんです。ありがとうございました。」



見かねてくれたのか、彼女はクスリと笑った。

思わず俺は、そっと彼女の髪に手を伸ばす。



「コレ・・・。」

「あ、黒板消し投げられちゃって。真っ白でしょう?」



チョークかぶりだというのに、彼女はクスクスと笑っていた。

慣れた風に。

なんで笑えんだよ。なんで慣れんだよ。

うちの学年の奴なんて、毎日大泣きしてんのにさ。



「先輩、私と会ったことがあるの、覚えていますか?」

「へ?」