「なんか、ヒントでもないわけ?」



部室の椅子に座りながらもやっぱり上履きとにらめっこ。

すると、部室のドアがギーと重い音を立てて開いた。

(やっぱ、古いな、この部室。)



「お前何やってんの?」

「先輩ー。頭貸してくださいよ。」

「はぁ?」



引き気味に口元を引きつらせる先輩。

俺はかくかくしかじかを話す。

ま、たいした内容じゃねぇけど。

そしたら先輩は「相変わらずくだんねぇとこに頭使ってんな」と笑った。



「じゃ、俺からヒントな。」

「ヒント?」

「そ。いじめられてる人間は、大抵めんどくさいことを押しつけられる。」

「めんどくさいこと・・・。」

「お前、ゴミ捨て、つーか掃除、めんどくさくない?」

「!」



ってことは、掃除一人でやってるってこと?



「でも、俺もう終わってるし。」

「バカ。一人でやってたら時間かかるに決まってんだろ。」

「やってないかも知れねぇし。」

「そこをやってるって信じてがむしゃらに走るのが単細胞だろ?」



部活でも、お前はそういうプレーじゃねぇか。

そう言って先輩はにっこりと微笑んだ。



「お前、足は速ぇし。

3学年15クラスくらいなら見て回れるんじゃねぇの?」

「行ってきて、いいんスか?」

「ま、部長には言っといてやるよ。

俺、お前の単細胞でお人好しのところ嫌いじゃねぇから。」

「ありがとうございますっ!!」



叫ぶと同時に、俺は走り出していた。



だから聞こえなかった。

後ろで「ホントバカだよなぁ。」と先輩が呟いていたなんて。