「はぁい、よってらっしゃい。見てらっしゃい!
写真!激レア写真はいらんかねぇ!!」
元気いっぱいに屋上で響く声。群がる女子。
彼女たちからは死角になるであろう貯水タンクの上で昼寝をしていた俺は、
横たえていた身体を持ち上げながらうんざりと息をついた。
響きわたるチャイム。
屋上に一人残る女は、写真が変化した札を嬉しそうに数えていた。
「おい。」
「うわっ!・・・ってびっくりさせないでよ。」
声を上げてから、俺を見てほっと口をゆるめる。
俺の中学から腐れ縁の女。
写真部。
人気のある男を盗み撮りしては売りさばく、魔性の女。
彼女は野口英世(所々に樋口一葉や福沢諭吉がいるのが恐ろしい。)を扇状に広げて、
バッサバッサと俺の目の前で揺らして見せた。
「ちょっと見てみて!あんたって意外と人気あるんだねぇ。」
「何?俺のこと撮ったの?」
「もち! お金のためならたとえ火の中水の中!!」
いや、それはまずいだろ。
が、その言葉は肯定になる。
「だって二階の教室なんて入れないから、木をよじ登って窓から撮るし。
部室に隠しカメラでしょ?
体育なんかは屋上から、特注の拡大レンズで撮影だし。
オフショット撮るためには情報交換が欠かせないのよ!」
コイツは本当に火の中でも水の中でも入れそうだな。