先生は冷たい瞳を私に向けると台所から消えた。

私は大きく肩を落としながら、台所の片づけに入った。

あぁ、「小さなお子様とご一緒に!」なんて言葉に騙された。

簡単だと、思ったのになぁ。



「―――何やってんの?」

「片付けです。」

「やめとけ。散らかるから。」



「はい。」と小さく呟いて、視線を下げる。

そして、先生の手に持つものが目にとまった。



「え・・・?」

「ほら。手。」

「え?えぇ?」

「火傷。 してんだろ?」



ぐいっと手を引かれる。

真っ赤になった人差し指。

それを流し台の水にさらされた。



「こんぐらいの応急処置、自己判断でやれば?」

「ごめんなさい・・・。」

「ったく。」



その間に先生は持ってきたものをあさる。

救急箱。

それが、先生が持ってきてくれたもの。

出てきたのは塗り薬とガーゼ。包帯。


冷え切った私の指をじっとみて「軽いな」と呟くと、

それはそれは器用に処置をしてくれる。

なんだか恥ずかしくって、照れちゃって、顔をそらした。



「ほら。」

「あ、ありがとうございましたっ。」

「お前、もうやるなよ。さっさと部屋行け。」

「で、でも台所・・・。」

「俺がやる。」

「・・・・・・はい。」