「・・・またか・・・。」
「ご、ごめんなさぁいっ!!」
私を見下ろす冷めた目線に、泣きながら必死の謝罪。
この人は先生。
私の塾の先生。
話せば三日三晩かかりそうな事情をはさんで、ただいま先生の家に居候中なんです。
とりあえず、先生には色々助けて貰ってるから、
何かお礼をしたいなって毎日頑張ってます。
頑張って、るんだけど・・・。
「何もしなくていいって、俺いつも言ってるよね?」
「は、はいぃぃ・・・。」
洗濯機を使えば服が茶染みを作るし。
料理をすれば、スパゲティがうどんに。
食器を洗えば、割るし綺麗にならないし。
雑巾がけすれば床はびちょびちょ。
掃除機してたら、この間先生が大事にしてるって箱ひっくり返して。
そうなの。
私、超ド級に不器用なの。
だからなんにもできなくて。
逆に、迷惑ばっかりかけちゃってる。
「で、今日は?」
「レンジに入れるだけの、ケーキ・・・作ろうと、思って・・・。」
「はぁ?」
うんざりしたような先生の声。
ぎゅっと瞳を閉じる。
そうだよね、レンジに入れただけで爆発するなんて普通じゃないもんね。
ジンジンしてる人差し指を後ろ手に隠す。