恥ずかしそうに頬を赤らめて、小さく微笑んで一言。



「行くなよ、って。言って欲しかったんだもん。」



あんまりにもその表情がかわいくて、俺は思わず腕に閉じこめた。

だけど抵抗なんてされなくて、ほっと一安心。



「言っておくけどさ、おしとやかな姫だったらこんなことしないからね。」

「―――悪かったな。」

「ほーんと。ヘタレすぎるわよ。」



愛しい場所ならなんのその。

家族に刃向かうは、嘘を付くは、頑固だは。



「どんだけだよ。」

「さぁね。

これくらいは、おとぎ話に刃向かったっていいんじゃない?」



そんなもんかな。

俺は困って頬を掻く。



「あ、そうそう。」

「ん?」

「半年後に、過保護なお兄ちゃんが私を迎えに来るから。」

「はぁ?」

「そん時は、おとぎ話通りに守ってよね。」



にっこりした笑みに、逆らえるわけないじゃんか。



「はいはい。お前、大人しく竹にでもこもってろよ。」

「無理。 だから、あんたの部屋に籠もってることにするよ。」



せいぜい、お兄ちゃんに勝ってよね。

そう笑った彼女があまりにも愛しくて、抱きしめた腕に力を込めた。



離さねーぞ。このやろう。